会員の声(ブログ)

八ヶ岳jomon楽会 会員の声ブログ > つれづれ日記 > NIAS Genebank

NIAS Genebank

 近年の研究で、縄文人が野生のマメを見つけ、それを大きくしていく過程が徐々に分かってきた。彼らがマメを大きくしたことは栽培していたことにつながる。栽培したことで、縄文時代に農耕文化があったとはすぐには言えないが、園農という言葉を使えるのではないかと学者たちの議論が盛り上がってきている。農耕とまで断定する学者もいる現況である。
 「日本学術振興会科学研究費基礎研究(B)中部山岳地域縄文時代マメ栽培化過程の解明」(研究代表会田進)グループでは、土器種実圧痕のレプリカ法による研究と、土壌フローテーション法による炭化種実の研究によってシソ属果実(エゴマ)、ミズキ、ダイズ属、アズキ亜属のマメを大量に見つけている。それに伴い研究グループは野山に分け入り、ツルマメを採取した。ツルマメはダイズの野生種で、それを2014年に播種し、収穫した。2015年は更に多くの品種のマメを栽培し、縄文時代のマメとの関連を調べようとしている。
 35種類のマメを5月20日に蒔いた。その35種類のマメは国立研究開発法人「農業生物資源研究所」遺伝資源センター(ジーンバンク)から手続きを経て分けていただいた。4月2日つくば市にあるその長ったらしい名前の研究所、短く言えばジーンバンクに奥泉博士を訪問した。ジーンバンクは日本、否、世界の津々浦々まで出かけて行き、種を集め、保存に努めている。それは大災害、気候変動の影響などでの「作物在来品種の消失」に備えてのことである。
 農業の近代化は、大規模栽培を可能にし、企業としての農業が成り立つようになった。そしてそのことは取りも直さず「作物の単一品種化Monoculture of crops」を意味する。しかし、作りやすく、美味しい品種に頼ることによって、在来種の作付けがなおざりにされると、単一品種が打撃を受けた場合、食生活に危機が訪れる。そのことを危惧してのジーンバンクの存在である。イネを例にすると、ジーンバンクでは69品種を保存し、さらにゲノム情報に基づいて代表的遺伝資源セットの作成をして、万が一の食料危機に備えている。
 奥泉博士の言葉が印象的だった。「品種の多様性から単一性への移行は、縄文時代の多様な植物利用から弥生時代のイネ一辺倒への移行と同じように考えられる」13,000年も続いた縄文時代の謎が食生活から解けそうな気配がするこの頃である。                        記:山本郁子


ページの先頭へ