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「直感音楽へのお誘い」に参加して     ミッツイ植田

8月31日(土)夜7時半から、八ヶ岳文化園にて「直観音楽」を演奏する会が催されました。

当日は、京都造形芸術大学の中路正恒教授と、同大学非常勤講師の寺村幸治氏にご指導いただきました。
お二人は、「直観音楽アンサンブル」を結成されており、京都造形芸術大学の学生との定期的な演奏会やCD制作などの活動、また地方を巡って「直観音楽」の普及に努めていらっしゃいます。

会田先生は3回目。石川会長や、その他のメンバーさんは2回目の体験とのこと。表情に余裕がありました。一方、会田先生から笛を持って来て、という依頼を受けて参加したミッツィ植田は、初めての参加でしたので、これから何をすればいいのか、チンプンカンプンでイスに座っておりました。


では「直感音楽」とは、いったいどんな音楽なのでしょうか?
 ドイツのケルンで生まれたカール・シュトックハウゼンという音楽家が始めた、新しい音楽の形とでも言えばいいでしょうか。2005年に来日して演奏し、日本の音楽家にも影響を与えたようです。インターネットで「直観音楽」と打ち込むと、結構な量の情報が書かれていますので、もっと詳しいことを知りたい人はそちらを参照していただくとして、ここでは当日の体験をご紹介します。

「直観音楽」には、楽譜がありません。既成のメロディやリズムを演奏することは禁止されます。
ですからプロの演奏家のほうが、この音楽の演奏は難しいかもしれません。
しかし、楽器を手にした演者が、それぞれ勝手に音を出し放題にすると、メチャクチャなカオス状態になってしまいます。そうならないように、初めにルールというか心得が参加者に説明されました。
・演奏者は、自分を表現しない
・自分の感情を入れない
・他の演奏者の演奏を常によく聴いている
・止めようと思うまで弾け
・しかし、他者の演奏と合っていないと思ったら、すぐ止めよ

これで、カオス状態になるのを抑制できます。それでいて感性に従って、のびのび奏でるのです。これを直観できるかできないかが、「直観音楽」のキモでしょうか?

普通の音楽では、特にプロは、その演奏の中に感情を入れ、自分を表現します。
「どうだ!上手いだろう」というアピールが必要でしょう。また圧倒的なテクニックで感動させるのが仕事みたいなところがあります。「直観音楽」は、そういう演奏ではないようなのです。

演奏する曲にはタイトルがついていて、演奏の方向性がテキストの形で指示されます。
詩のような指示書を読み上げてもらって、そのあいだに参加者が曲のイメージをふくらませます。
この短いけれども的確な詩によって、直観的に使いたい楽器を選びます。または、すでに手にした楽器をどのように奏でるか、潜在意識・深層意識が決めるという感じでした。

この日は、1968年にシュトックハウゼンが書き、「直観音楽」という名称を与えた「七つの日より」の中から「正しい長さ」、「強さ」、「夜の音楽」の3曲を、みんなで演奏しました。
初めての演奏で、何がなんだか解らない私でも、直観の趣くままに気持ちよく演奏に参加できました。そこには、音をハズしたり間違ったらいけない、という従来の演奏にはありえない開放感と清々しさがありました。自分がみんなの音の一部分になっている一体感もありました。

演奏した3曲のうち「強さ」という曲の詩(指示)は、こんな感じでした。

一つ一つの音を弾け(引けかも?)
心を込めて
おまえから発散する
暖かみを感じるまで

弾き続けよ
そしてそれを保て
できる限り長く

曲は、誰ともなく始め、数回の高揚感と数回のピークがあり、低くときには高く、優しくときには激しくの波をくりかえし、参加者がこれでいいと演奏を止めるまで続き、誰も合図もしていないのに
自然と鳴りやんだのでした。

1回限りの瞬間音楽、偶然性の音楽、世界にひとつ、再現性なし。上手いヘタもなし。その場のメンバーの感受性が即音楽になる。何の楽器でもよい、音のでるものなら楽器でなくてもよし。今までに体験したことのないおもしろさでした。
みんなで作る、みんなで音を楽しむ。まさに文字どおり「音楽」です。「直観音楽」の醍醐味は、ここにあるのではないか、これが私の感想です。

演奏に参加したのは、主に縄文阿久の会のメンバーさんでしたが、幼稚園の年長さんぐらいのお子さんを含むたくさんの見学者がありました。楽しく盛況のうちに終了しました。


最後に、当日ご指導いただいた中路正恒教授のブログから、この日の演奏の感想をご紹介します。

原村の人たちが協力して企画してくれた「直観音楽へのお誘い」という
催しは、まったくの大成功のうちに終わった。驚いたのは、参加してくれた
人々の感度がものすごくよいこと。最初の「正しい長さ」の演奏からして、
文句のつけようもないほど素晴らしい演奏になった。節度と並々ならぬ自
信と、これまで鍛えて来た音感---驚くほどだった。
次の「強さ」「夜の音楽」ともに将来このメンバーでCDが出せると信じ
させる出来栄えだった。
〈引用:「世界という大きな書物」 中路正恒公式ブログ 2013/09/01から〉


ご指導いただいた両先生、企画をしてくださった八ヶ岳文化園の久米さん、会田先生、
縄文阿久の会のメンバーさん、ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。


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