八ヶ岳山麓 縄文文化の魅力

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諏訪の原点縄文=日本文化の祖形

 日本の考古学史、それも旧石器や縄文研究において、燦然と輝く諏訪考古学の巨星たちの足跡に共通していることは、その研究姿勢にある。地域に足を下ろして特にこの諏訪にしっかり腰をすえ、旧石器時代や縄文時代の文化の解明に実績を残している。八幡一郎が予測した日本の旧石器文化は戸沢充則によって体系的に整理され確固たる日本の序史として定着した。宮坂英弌の集落研究は、はからずもその後の列島改造論が引き起こした大規模発掘による誰も予想しなかった膨大な集落研究にとって、大きな指針となり、今日に及んでいる。
 藤森栄一を中心とする八ヶ岳山麓の縄文文化生活様式の復原は、日本文化の基層文化として縄文文化祖形論のバックボーンとなり、縄文文化研究のもといとなっている。今や世界に冠たる「縄文」は諏訪を中心とした中部山岳地域から発信されているといってよいであろう。

 縄文人は決して野蛮な未開の民族ではない。日本人の直接の祖先であり、色濃く私たちの体内に血が流れていることが、近年のDNA研究から判明している。谷川徹三の提唱した「縄文的原型と弥生的原型」という二つの基層文化論も、岡本太郎のいう縄文の「日本文化祖形論」も、弥生土器や埴輪の奏でる美と比べたとき理解ができよう。
 7年に一度繰り広げられる「御柱祭」を見るたび、木の実と獣の肉を主食とした日本人(縄文人)と、米を主食とした日本人(弥生人)の血が、この諏訪には共に強く残っているとしか思えないのである。そして今、諏訪の原点、否、日本の基層文化の原点とされる縄文文化の研究は、中部山岳地域の大規模集落を結ぶ共通のキーワード=黒耀石研究を通して、縄文文化ネットワークとして構想できることが見えてきている。
 縄文人は武器を持たない、戦争を知らない人々である。もし全地球が縄文人の精神に帰ったらこの地球上に戦争はなくなるのであろう。その縄文人の平和な心を未来につなげていくためにも、世界的な文化遺産として後世に伝え、遺していく価値があるであろう。
 自然のなかで森と共生して生きてきた、縄文人のやさしい心を知るのは、縄文の大地であるこの諏訪の地域が最も恵まれている。この地域をこよなく愛してやまなかった考古学の巨星はまた縄文の優れた研究者であったことは決して偶然ではあるまい。
 縄文阿久友の会は、諏訪湖と八ヶ岳を見るとき、はるか太古の縄文の大地を思い、私たち人類の未来に夢を持ちたいと希むのである。


本文は『諏訪大紀行』「縄文の大地から」の筆者原稿を元に一部改変した。
紙面の都合で書き足りなかったことを逐次書き加えていきたい(文責:会田進)

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